部署間の意思疎通

 毎月、部品加工業C社の定例会議に出ています。営業や品管など部署と生産部署が離れているので、IP電話を通じて会議を行っています。

会議前日には各部署から社長以下にメールで報告書が配信され、中小企業診断士も受信しています。

報告書を受信しましたら、受信した旨を返信すると同時に、内容を確かめることが習慣になっています。

C社では、この頃責任者が定年退職となり、一方では新たに昇格した方が責任者になり、世代交代が順次進んでいます。

 

[何故か部署の間で連絡しない]

 そのような時、品管部署と生産部署の不良数が不一致のまま配信されました。

会議が終わった直後に「品管部署の不良数と生産部署の不良数が合っていません」、と新たな品管責任者に直接話しました。社長の目の前です。そのようなこともあってか、翌月の品管報告書には「誤りが先月あったので、修正した」、品管報告書を直していました。

 しかし、今回も受信した両部署報告書の不良数が、また、一致していません。指摘した点は直しましたが、続いて起きている同じ誤りには気が付かないのです。それで、次の返信メールを両部署の担当者と社長に限って発信しました。以下はメールの要約です。

「生産部署A様、報告書ありがとうございます。忙しい中、大変だったと思います。ところでB様の報告書では不良数が〇件でした。一方、A様の報告書では不良数が◎件です。お互いに連絡を取られて、不良数を同じにされたらと思います」

 品管部署B様にも同じ趣旨のメールを出しています。しかし、A様からも、B様からも返信メールが無いままに会議を迎えてしまいました。中小企業診断士はどうしたのかと思いながら、会議に出ましたところ、会議では生産部署A様が発言しました。

「当方の不良数の計算の方法が品質部署の方法と違うために、両者の不一致が生じました。来月からは、品質部署の不良数の計算方法に合わせます」

 

[質問に回答しない会議]

 品管部署B様も「そうだ」と頷いていますが、営業部署の方が発言しました。

「すると、生産部署の不良数の取り方が間違いだった、と言うことでしょうか。でも、今までは両者の不良数は同じだったと思いますが、変えたところを分かり易く説明をお願いします」

 生産部署も品質部署も黙っていて、時間が過ぎるばかりです。営業部署の社員は不満な顔つきです。C社の会議は、このように質問への回答がないことがままあります。”波風立たないように会議が終わる”ことが良いと考えているのでしょうか。

 社長が「品管の数字が正しいのではないかと思いますよ。生産は、品管とよく打合せしてください。そして、今期の不良数は計画した上限値に納めてもらいたい」、と話して引き取りました。社長は、「生産部署が品質部署と打ち合わせをしていないのがこの理由」、とこちらに小声で話しました。

 来月以降、どうなるのか、注目することにしました。

 会議の終わりが近づきました。社長から、中小企業診断士に向かって、「ご意見をお願いします」、とのことです。

 

[会議の目標は、問題の解決です]

「一つは、会議の前に自部署と他部署の報告内容が整合しているのか確かめてください。皆さん、他部署のことに関心を持って、互いに話し合ってください。そして、数字合わせは早く卒業して、業務の改善や新たな加工方法の開発に力を入れるようにしてください。二つ目は、皆さんは会議では議論しないで、早く終わって欲しいと思っているように感じます。先ほど、営業の方の質問への答えがないままに終わっています。営業の方は、客先に不良を説明するので答えが必要なのですよ。この会議が終わったら、生産と品管は直ぐに営業に答えてください」

 会議後に、社長と話し合いました。

 責任者が交代する時期には、新任者が不慣れもあって隙間が出てきてしまう事例なので注意が必要ということになりました。一方では、新しい方々が新鮮な考えを出す会議にしなければ、会社は発展しません。会議が儀式にならないように活発にするよう気を配ることにしました。

 加えて、PCや電子端末が使われるようになり、直接会って話し合ったり、電話でやり取りすることが少なくなって、こんなことが起きているのかもしれません。会議に集まって来られる方に「こんにちは、今日はどうですか!」などと声掛けの機会を作り出すことにしました。しばらくは、注目して行かねばならないと思っています。

中小企業診断士 窪田靖彦

皆さまの会社では、どのような会議なのでしょうか。以下は、会議の事例です。

「①参加人員を最少にする、②参加する理由のある者のみ参加する、③決定事項には責任者を指名する、④課題に徹底して向き合う」

「①会議資料作りが大事な仕事になっている、②資料不足が理由で判断しないことがある、③互いに改善すべきことには触れない」

「①会議は立って行うので椅子がない、②資料はない、③決定事項はメモし直ぐに配布する、④決めたことは次回確認する」