冒頭から個人的な話で恐縮だが、筆者は50歳の企業内診断士である。社内でも50代向けのキャリア研修が実施されており、キャリア自立を促される場面が多い。ここでいう自立とは独立を意味するのではなく、自らキャリアを描き、主体的に実践していくことだ。しかし、バブル崩壊後の就職氷河期に社会人となった我々世代のなかには、キャリア形成よりも目の前の業績を優先してきた人が少なくないのではないだろうか。
一方で、企業環境は大きく変化している。今年9月までに国内上場企業が募集した早期退職・希望退職者数は既に前年を上回り、しかもその6割は黒字企業だ。背景にはAIやDXによる効率化、高年齢者雇用義務化による人件費圧縮、年齢構成の見直しなどがあり、主に標的となるのは50代以上である。このように黒字リストラが現実化する中、安定に安住することは難しい。
しかし、悲観する必要はない。50代は豊富な経験と知識を蓄積しており、診断士であれば診断士資格という強みもある。独立を目指す人、企業内でさらなる役職を狙う人、後進育成に力を注ぐ人、新天地で挑戦する人など多様な選択肢があるが、そのいずれにおいても重要なのが「経験の資産化」「ネットワークの再構築」「知識のアップデート」である。
経験の資産化とは、これまで培った知識や実績を整理・体系化し、再利用可能な形に転換することだ。自分の強みや弱みを言語化することで、キャリア自立の土台となる。
企業内の50代は人脈が停滞しやすい時期でもある。社内に閉じこもれば選択肢は狭まるが、診断士であれば外部ネットワークを築きやすい立場にある。支部活動や研究会、セミナーへの参加を通じて人脈を広げることで、視野を広げキャリアの可能性を広げることもできる。
企業環境はDX、脱炭素、インフレ、人手不足など新しい課題が次々に登場している。社会人としての価値を維持するには、知識を積極的に学び直す必要がある。知識のアップデートは単なる補充ではなく、キャリアを再設計するための武器となる。
50代は社会人人生の終わりではなく第二のキャリアの始まりである。重要なのは準備をいつ始めるかであり、大きな一歩をいきなり踏み出す必要はない。小さな一歩を積み重ねることで未来の選択肢は確実に広がっていく。
(齋藤 英之)
