付加価値経営とはなにか

付加価値経営とはなにか

 先日、A社営業会議で「今まで当社ができなかった物性の違う材料を溶着することで付加価値をつけて、新しいお客様と取引ができた」との報告がありました。質問してみました。「その新しいお客様は、今まではどうされていたのです」すると「他社が納入していたが、当社が何回も見積を出して取った」とのことです。「それで粗利益率はどのくらいですか」に対し「新しいお客で、今後期待できるので通常の率より低くした」とのことです。まとめてみると、A社にとっては新しい技術です。しかし、お客様から見ると、「今までと同じ技術」ですから、当社の「安い価格」に魅力があるので、当社に発注したのです。

 読者の方は、安い値段で受注すると粗利益率が低くなるので付加価値経営ではないことはお分かりと思います。では、付加価値経営とは何なのでしょうか。


デフレから脱却するには

 「多くの会社は、製品やサービスに付加価値をつけても、価格を下げないと売れないという現場の声を重視する経営を続け、そのしわ寄せを協力会社に押し付けてきた。攻めの戦略でやるべきことは、製品やサービスの付加価値を高め、相応の値上げをして収益を出し、これを原資にして社員、株主、協力会社などステークホルダーにバランスよく還元することだ。この攻めの姿勢をとることで、前向きな知恵と汗が社内に結集する」と、V字型の業績回復を実現した坂根正弘コマツ相談役は、デフレ脱却のすすめかたについて語っています(ちょっと古いですが、毎日新聞昨年4月3日から抜粋・加筆)。

 今までは毎年の単価引き下げの要求をどう答えていけるのか考えていたので、値上げを忘れてしまった頭を柔らかくすることが、始まりになります。


顧客が驚く窮状

 ソフトウェア開発のC社は「顧客に値上げを長年申し出ておらず、思い切って値上げを申し出た」ところ、顧客は社が説明する経営の苦しい状態に驚きました。と同時に、申し出を理解して値上げを受け入れ、「なぜ、今まで黙っていたのか」と営業担当に言ったそうです。

 この背景には、社がどのような仕事も正確に行う優秀な多くのビジネス・パートナーと強い関係を持っていることを、顧客が長いあいだ評価していたことがありました。


新聞で知る我社の強み

 従業員70名のB社は、新聞記事に「K社では切削工具の精度を従来当社比で10倍に高め、誤差を150ナノ(ナノは10億分の1)に抑えた」とあることを知りました。B社は既にK社の約6倍の精度の加工技術があり、ホームページに掲載したところ、問い合わせがあって受注に結びつこうとしています。新聞報道に気づいていなければ、「当社の技術が優れている」ことを知らずにいて、このような展開はありませんでした。


我社の強みはなにか

 A社とB社は、ともに自社の付加価値が何であるのかを気づいていませんでした。顧客の反応と新聞の報道から、”後付け”で「本来の価値に加えて、提供していた別の価値」を付加価値として気づいた事例です。

 我社の強みを、明確にすることが付加価値発見の始まりです。社内では「そんなこと、たいしたことではないよ」と思うことが、顧客からみたり、外部から見たりすると、A社やB社のように「付加価値」が分ります。価値を掘り出し、磨き上げ、顧客に伝え、付加価値経営を実現したらどうでしょうか。


どうしたら高い付加価値になるのか

 それは、顧客から高い評価が得られることで、高い価格、付加価値で売れます。では、どうしたら高い付加価値になるのか、これには二つあります。
 一つは、新しい製品、技術やサービスを提供することです。
 今ある製品、技術やサービスに改良して提供したり、全く新しい製品、技術やサービスを提供することです。これらのことは、新たな付加価値を加える試みになり、
坂根正弘コマツ相談役が言うことに合致します。
 二つ目は、製品やサービスの原価を引き下げることです。原価を引き下げても顧客の評価が高まることです。方法はにはVA
とVEがあります。VAは、今ある製品などの機能や品質を考えて、他に代えることで原価を下げる方法です。VEは、製品を設計する時に製品などの必要な機能や品質の水準を考えて、過剰にならないようにすることです。VAの積み重ねが、VEに結びつくことはよくあることで、この二つは連動します。

 そして、最も大事な点は、他社と競える開発力や生産技術力を持った意欲のある従業員を育てることです。これは、経営者の役割で責任です。

ステークホルダーは利害気関係者

VAValue Analysisの略字 VEValue Engineeringの略字

                                       中小企業診断士 窪田 靖彦