オレオレ詐欺 知っておくと防げるお金の被害

 「オレオレ詐欺を防ぐセミナー」

 新聞やテレビで連日オレオレ詐欺が報じられています。筆者の知人を集めて、NPOをつくりお金のシリーズの中で「オレオレ詐欺を防ぐセミナー」を行いました。約30人集まり、皆さんが関心をオレオレ詐欺に持っていることが分ります。そして、活発な意見や疑問が出て来ました。所轄警察署の生活安全課責任者の方も直近の状況を説明され、会場は「そうなの、たいへんだな」という声が出ていました。

 初めに司会者が、調布市製作の無料で借りたDVD”母と息子との言葉の物語”が映されて、解説がありました。息子と偽る犯人から「約100万円の小切手が入ったかばんをなくした]、「上司が70万円出してくれるので良かった」「自分は警察に盗難届けをするので、同僚に残り30万円渡してくれ」と涙ながらの訴えに母親が騙される筋です。

出席者から活発な質問

司会者:皆さん、このDVDを見て感じたことをお話してください。この例はよくあるオレオレ詐欺です。

Aさん:母親が初めに電話に出たときに、「浩二」と自分の子供の名前を母親が言ってしまったことが拙いのかなと    

    思います。

司会者:そうですね、その通りと思います。母親が気が動転してしまい、本名をこちらから言ってしまっています

    ね。頭が真っ白になってしまうのでしょうか。気をつけたい点です。

Bさん:掛かって来た電話の番号表示のある電話を使うと、防げると思って、自分は使っているがどうなんでしょう    

    か。

警察署:そうですね、オレオレ詐欺を防ぐたいへん良い対策です。人によっては、留守番電話の機能をつけている方

    もいます。

 所轄警察も積極的に答えて、なんとか被害を防ごうとする意欲が見えます。

Cさん:母親と息子の普段の会話がないことが、こんなことで騙される原因じゃないのかなと思いますが、どうなん

    でしょうか。

司会者:そのとおりです。日ごろから息子と話していれば、現金を扱う仕事をしていないことが分って詐欺に引っか

    かる事はありません。

親族からの批判には堪えられない高齢者

Dさん:DVDの最後の方で息子が「母さん、騙されるほうが悪いんだ」と母親を非難したことで、母親が急に落ち

    込んだ場面がありました。こんな事はあるのでしょうか。

司会者:そうなのです、よくお気づきなられました。オレオレ詐欺は、経済的な被害だけに止まりません。ある人が

    WEB上でオレオレ詐欺の被害者の声を出したところ、馬鹿だとか間抜けと書き込まれ直ぐに止めた事例も

    あります。息子や親族から非難されると、人格まで否定されたと思ってしまうほど強い衝撃を受けてしまい

    ます。このような点には充分に注意が要ると思います。

 親族から支えられるのではなく、逆に騙されるほうが悪いんだと言われてしまい逃げ場がないように追い込まれ、犯人が悪いのだと言わないので、被害者本人はどうしたらいいのか分らないくなります。

 次は所轄警察署からの説明がはじまりました。

次々と出てくる新たな騙しの手口

警察署:オレオレ詐欺は、平成14年ごろからはじまりました。最初はDVDのような「小切手の入ってかばんを無

    くした」型です。次の還付金型で、ATMを使ったものです。その後、金融機関さんの協力があって、AT

    Mの引き出し限度額が減らされて、窓口でお金を引き出すようになると窓口の担当が詳しくお金の使途を尋

    ねて防ぐようになりました。すると、犯人側は「リフォーム代金や旅行代金」だとリフォーム店の冊子や旅

    行代理店の旅行案内などを金融機関に持ち込むよう被害者に吹き込み、巧みな噓を言うように指示していま

    す。

 聞いていると、このように犯人は次々と新しい手口を編み出してあたかも会社と同じように新製品や新技術を開発しているように思います。警察が追いつくと、次の手口を編み出す知能犯です。

警察署:このごろでは、DVDのような「受け子」型が出てきましたが、これは金融機関の防止策がきつくなって転

    換したものです。また、仙台から新幹線で東京まで現金を持参させたり、遠隔地から飛行機で羽田まで持っ

    てこさせる事案も出てきています。「持って来い」型とでも言うような手口です。

Eさん:ところで、どのくら被害が出ているのでしょうか。

警察署:都内での被害は今年8ヶ月で45億円余り、この外に金融機関などで被害を防いだのが31億円程度です。

    合計76億円弱ですから、毎月1億円近くになります。

Eさん:どうしたら防げるのでしょうか。

警察署:今日、この会場に来られている方々はオレオレ詐欺に注意されているので、引っかかることはありません。 

    皆さんが近所の方、お知り合いの方に今日のことを話してください。お話しをお聞きになった方々もオレオ

    レ詐欺に騙されないようになります。

    DVDにもありましたが、息子さんと話す機会を増やしてどんな仕事をしているのかは知って置いて下さ

    い。

 会場のそこかしこから「偶には息子に電話してみようかしら」「この頃、元気にやっているのか電話しよう」などと話し声が聞えてきました。

女が犯人騙しの手口

Fさん:私は息子がいませんが、二人娘がいます。娘に成りすまして騙す犯人もいるのでしょうか。

警察署:そうですね、良いご質問です。事案は少ないですが、女が犯人で騙すことも出てきています。泣き出すこと

    から始まった事案もあります。聞いているほうは慌ててしまうよう仕組んでいて、とても巧妙です。

    それと、詐欺ではありませんが、この頃起きていることに朝のごみ出しにちょっとした時間だけ鍵をしない

    でいた間に、空き巣が出てきています。ほんのちょっとして油断をついてきますので、気をつけるようにお

    願いします。

 女性の参加者から「ごみ出しの時、立ち話は危ないのかしら」「朝、忙しいからキチンと鍵をかけることはうっかりしますね」などの声が出て来ました。

 司会者がもうそろそろ時間ですので、アンケートにお書きになって退席されるようお願いがありました。次回は来年春前に予定しているとの案内もあり、警察の方にお聞きしたい方が残っていましたが、やがて終わりになりました。

 高齢者の方は、普段あまりご近所とお話しすることが少ないのか、このような話し合いでは活発なご意見が出てきたと思います。核家族の反映がここにも及んでいます。このような集まりは良い効果があるように思いました。

このメールマガジンをお読みの方へお願いです

 経営者の皆さんにも、オレオレ詐欺の犯人が電話を掛けてくるかもしれませんが、引っかかる事はないと思います。親族の方々、従業員の方々のご両親に電話を掛けてくるかもしれません。この事例ををお話しされてオレオレ詐欺に掛からないようにされるようお願いします。


中小企業診断士 窪田 靖彦