中小企業が女性活用を考える際に大事なこと

女性活用のために職場に必要なことと言えば、まず産育休制度や事業所内託児所などのハード面の整備が思い浮かぶかと思います。確かにこれらの施策は重要ですが、単独で実施するだけでは十分ではありません。中小企業が女性を活用し、真に働きやすい環境を整えるためには、会社全体で、女性だけでなく、働く上で時間や場所に制約のある人材をお互いにサポートするマインドを持つことが必要です。そのためには、様々な施策を有機的に組み合わせていくことが重要です。

 

インターネットで検索すると、各企業の様々な取り組み事例が見つかります。ただし、他社の事例を単純に真似するのではなく、自社の強みとそれを活かす経営戦略を明確にした上で、多様な人材が活躍できるための具体的な施策を計画する必要があります。さらに、その施策が自社にどのようなメリットをもたらすかを見極めることが重要です。

 

私が経営診断をしたある中小製造企業では、職人の高い技術を強みとして持ちつつも、持続的な成長のためには顧客との信頼関係を戦略的に築いていくことが重要と考えていました。女性が柔軟なコミュニケーションとマルチタスク遂行に長けていることに着目した社長は、女性従業員たちに営業から製品設計、納品、アフターフォローまで一貫した複数の業務を任せ、それ以外は時間に縛られない柔軟な働き方ができるようにしました。結果、顧客への丁寧なフォローと社員間の連携が強化され、業績が向上していきました。

 

このように、多様な人材、女性の活用を考える場合には、単に社会からの要請に答えようとするだけでなく、自社の経営戦略と結び付けることが大事です。中小企業は大企業と比べて人材や資源に制約があるかもしれませんが、それを逆手にとり、一人一人の力を最大限に引き出す柔軟な組織を構築することが可能であり、それが新たな競争力を生み出すでしょう。

 

 

(前田 久美子)