「共感」を生む経営で事業再構築を!

事業再構築補助金の公募要領(第1回)が3月26日に公表され、4月15日(予定)より受付が開始されることになりました(https://jigyou-saikouchiku.jp/)。ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応するために、思い切った事業再構築に取り組む中小企業を支援する取組みです。コロナ禍の中小企業政策も、当面の資金繰りや雇用確保への支援から、いよいよ競争力強化や継続的な成長を促す新たな段階に入ったと感じます。

 

公募要領によれば、事業再構築には「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」の5つの類型があり、補助金申請を行うにはこれらのいずれかに該当する事業計画を策定する必要があります。中小企業庁の資料を参考に、各類型で決められている要件を一覧表で整理しました(図表1)。製品や市場の新規性、および新事業の売上計画等が共通して重視されていることが分かります。

事業再構築は、既存の事業を見直して新たな製品、市場(=顧客)、製造方法などに挑戦するという意味で、企業が「一皮むける」ための難度の高いプロセスです。このような取り組みに成功するためには何が必要なのか? そのヒントになるのが、『共感経営(野中郁次郎、勝見明著:日経経済新聞出版)』という本です。イノベーションや社内改革など成功を収めた企業に共通する特徴は、取り組みの意義や目的を経営者と社員の双方が十分に理解し、強い「共感」で結ばれている点であることを、事例企業への丹念な取材と分析に基づいて示しています。

 

著者の野中氏によれば、「相手への共感」「物事の本質への気づき」「跳ぶ仮説の発見」というプロセスを通じて、大きな成功が実現されます。そして経営者は、「共感」を生むために社員が腹落ちし、わくわくするような「物語り」を作る必要があると主張しているのも興味深い点です。「物語り」はプロット(筋書き)とスクリプト(行動規範)からなっていて、「何を」「なぜ」やらなければならないかという、企業の存在意義やビジョンにあたるのがプロット、さらに、それをどう実現するかに相当する、具体的な行動規範や指針がスクリプトです。共通の目標に向かって社員が一丸となって進める企業であれば、事業再構築という目標も実現しやすいでしょう。『共感経営』を読んで、企業が一皮むけるにはそういう雰囲気づくりが必要と感じました。

 

中小企業診断士である我々も、社内での「共感」を生む取り組みを後押しして、事業再構築をご支援します。取組みを通じて実現したいことを明確にし、経営者と社員が「自分たちもやれば出来る」という気持ちを持てるような「物語り」作りをお手伝いします。そのためには企業が持つ強みの本質を理解し、新しい製品開発や市場進出のためにご支援すること、そして事業の目的や意義を共有できるストーリー作りにも踏み込める、共感力や表現力をもつことが求められると考えております。

 

 

中小企業の成長を後押しする施策はこれから本格化していくと思います。ご一緒に取り組んでいきましょう!

 

(大橋 功)