AI技術の急速な発展により、データ分析や資料作成、業務プロセス設計といった従来コンサルタントが担ってきた業務が自動化されています。中小企業の現場では高額なコンサルタントよりAIで十分という声も聞かれ、テンプレート的な提案への反発も強まっています。しかしこれは、報告書作成に終始するだけのコンサルタントの淘汰を意味するものであり、豊富な現場経験を持つ私たち中小企業診断士にとっては大きなチャンスです。
AIは膨大なデータ処理や論理的分析を得意としますが、感情への共感や創造的発想、限られた情報からの推論といった人間固有の能力は苦手です。売上向上という相談の奥に隠れた後継者問題や組織の悩みを、信頼関係の中で引き出すことは人間の診断士にしかできません。現場で一緒に試行錯誤し、会議室では出てこない本音をその場でつかめるのも、常に経営者のそばにいるからこそです。
従来の診断と処方箋モデルから、クライアントと歩む伴走支援への転換が求められています。美しい報告書を提示して終わるのではなく、課題の発見から解決策の実行、定着まで継続的に関わることが本質的な支援です。現場で一緒に試し、うまくいかない箇所をその場で調整します。こうした試行錯誤を重ねることで、組織の深層課題が初めて見えてきます。この実践的なプロセスこそ、AIには担えない価値です。
重要なのは、AIを恐れるのではなく積極的に活用することです。かつて日本が産業用ロボットを「鉄腕アトム」や「ドラえもん」のような優秀なサポーターとして受け入れ、世界有数の工業国に成長したように、AIを強力なパートナーとして使いこなすべきです。調査・分析・資料作成はAIに任せ、その時間を現場での伴走や経営者との対話に振り向けることが診断士の付加価値を高めます。
AIの台頭は診断士の役割を奪うのではなく、見直すきっかけを与えています。これからの診断士には、AIと現場と経営者をつなぎ、変化を最後まで支える実践的なパートナーとなることが求められます。デジタル化が加速する今こそ、人間ならではの手触り感のある支援で私たちの真価を発揮していきましょう。
(飯島 利幸)
