知情意を理解したい

 夏、本格的になり、暑い日が続きます。

 今回はちょっと趣旨を代え、日ごろ思うことです。

 売上が低迷して利益が得られない経営者や従業員の方々とお会いすることがあります。売上が充分でなく、赤字続きでどうしようか、と苦しんでいる方々です。そのような場合、自身と違う考え方を取られている方、今まで経験した世界が異なる方をどう受入れるか、また、どう共に乗り越えるのか、これらは難しい壁かなと思うことがあります。

 

直ぐやる対策、効果遅い対策、それから・・・

 例えば、社長と従業員が、その従業員が担当している部門の赤字をどうやって黒字にするかを話し合っても、結論が出てこない場に立ち会うことがあります。そのような場合、先ずは現状をつかみ、「直ぐに行って、早く効果を出す対策」、「直ぐに行なうものの、その効果は一定期間後に出てくる対策」を立て実行したら良いのに、と思います。なによりも大事なことは「現状を正確に、必要な方々に知らせて、ご意見を頂くこと」と「打った対策の効果を定期に、必要な方々に知らせて、より効果的な対策を話し合うこと」です。お知らせする先には、お知らせと共にお知恵を拝借することで、協力関係をつくります。

 一つの部門の赤字であっても、赤字額が大きいと会社が危機に陥ることがあると肝に銘じて、すべての部門の方々から支援や助言などを得られるようにします。CAPDCAです。

 

心掛けていること

 繰り返しになりますが、例えば「社長が従業員とどうやって黒字にするか」を話し合っても結論が出てこない、あるいは、出さない方々に会うと、「なんでそんなに時間をかけるのか、課題と対策、そして結果の効果を紐付きにして、早々に行なったらよいのに」との思いが、頭の中を廻ります。また、「やってみなければ、対策がよいのかどうか分からないのであれば、早く試しにやってみたらよいのに」と思い、そのような助言をします。しかし、こちらからの助言が受入られない場合があります。当方も、元気さがどこかに去り、活力が低くなってしまうので、何とかしようともがきます。

 今はまだ充分ではありませんが、これからは次を心掛けようとしています。自身と全く違う方々と、少しでも「アッ、そうなのか」と共感できるようにして行くことです。これには、ひとまずは自分の経験や考えを頭の外に置くことから始めたらよいのかなと思っています。そして、できるだけ相手の考えに立ってみることです。このようなことを行なうのは難しいことですが、相手の考えに立ってみると、別の視野が広がって行くのではないかと思っています。

 「貴方は、そのような考えが基にあったのか」と思い浮かべると、「それでは、結論を先延ばしも致しかたがないかもしれないな」と思うことが出来れば良いと思います。このように思うと、相手の方々にも伝わり、話しが先に進むと思っています。これは、まだ、途中ですが、少しは前が開けたように思います。

将来のことは、実際的ではない・・・

 

 次のような会議がありました。

営業「昨年や一昨年は、偶々大型の受注があったので良かったです。しかし、今年は、そのような受注がないので、売上が低くなっています」

 皆さん、7人くらいの方々は黙っています。

生産「その通りかもしれないが、今年の受注量はそれにしても細かくて、どうしようもありません。今は設定換えばかりで、効率が良くない受注ばかりだから。量が出る受注を取ってきてよ」

社長「営業は、生産の意見をどう解消しようとしているのかな」

 営業は、社長が実情をよく知っていると思って、黙っています。暗黙の了解です。こんなだんまりが続くので、結論がでてきません。そこで、中小企業診断士がこの状態を何とかしようと、話します。

診断士「資料には、今期から来期、そして、来々期と、受注数量が伸びるようにあります。これらを成し遂げる対策を行えば、何とかなるのではと思います」

営業「ああ、その数字は一応書いてみたので、実際的ではないのです」

 

例えば、こうしたらどうですか

 実際的でない計画は何の意味があるのかと思います。この言葉尻をつかんではなしても意味はありません。将来のことはこの場では論じても致し方がないと思い、今月起きていることから解決の糸口を見つけ出す話してみました。

診断士「将来のことは、別の機会にしましょう。今月の引合は○○件程度と資料にありますが、すると、受注したのは半分くらいですね。では、その失注した理由はどのようなものですか。例えば、仕様に沿ったように作れない、価格見積もりで負けた、納期が早すぎて追いつかない、等に区分けしたら、どうでしょうか」

営業「そんな細かく分けても、受注できるのですか。過去の失敗例を集めて意味があるのかな、手間ばかりかかって・・・、どんな効果があるのかな」

診断士「そのとおりです。過去の失敗実例を集めるだけでは、意味がありませんよ。それを足場にして行くのです」

営業「でも、事務がたいへんになり、どうにもなりませんよ・・・」

診断士「過去の実例を、次の引合で活かすのです」

社長「どうやって、やるのでしょうか、お話ししてください」

 社長がこちらの話に関心を持ちました。一歩でも前進になればと思い、話を続けます。

診断士「QCD注に分けてみます。例えば、加工が難しいので、受注できなかったものは、生産や技術と一緒にでできるようにする、ということです」

生産「具体的に加工が困難な仕様が、どのような図面なのかこっちに回してもらえば、なんとかなるのか検討しますよ」

 このように、生産が乗り出してきたので、この方法は始まりそうでしたが、実際はそうは行きませんでした。

 

売上は営業だけがするものではないが・・・

 6か月は経ちました。しかし、営業と生産の間で、「失注はなぜ起きたのか、どうすれば失注がなくなるのか」は、具体的に話し合ってもいません。気持は「そうだよね、そうすれば良いのだ」となっても、強い意志が働かないのです。

 売上を上げるには、営業だけでなく、他の部も加わって行くように努めていくように、これからも話しかけて行きます。営業だけが売上責任を担っている、したがい、営業は積極的な姿勢を取れば取るだけ、責任が重く圧し掛かると思っているのではないかとも思っています。営業を生産・品管・総務などの部門が支え、営業と一緒に活動すれば良いのにと、助言し続けます。

 売上増加が、皆さん力を合わせて実現した事例を産み出すことが良いかなとも思っています。成功した事例をなんとか産み出したい、しかし、まだまだこれからです。

 今回の話は、なんとも締まりがありません。知情意の合一が必要かなとも、思っています。

中小企業診断士 窪田 靖彦

 

注:QCDは、重要要素の標語で、“Quality”(品質)、“Cost”(費用)、“Delivery”(納期)の頭文字を集めたものです。発展型として、“Service”(アフターサービス)又は“Support”(サポート)、業界によっては“Safety”(安全性)を加え「QCDS」とするものもあります。“Flexibility”(柔軟性)を加えて「QCDF」とする例などもあります。