人材採用

 支援先は、人材採用に新しい仕方を試していますが、昔から行って来た仕方も採用に結びつくように走りながら考えなら行っています。読者の皆さまが既に行っていることかもしれませんので、参考になるのかどうか分かりません。

 

 今夏の学生の内定確保率は、88%と報じられています。しかし、支援先の採用担当者Aさんからは、「未だ、12%も残っている、これからですよ。なんとかして結果を出すのは、最後まであきらめないことです」、と慎重な言い方です。そして、支援先の採用担当者や採用担当兼任者、育成担当、そして経営者が出ている会合で尋ねました。

「昔、行われていた”社員が出身校の恩師や就職関係者を訪ねる”ことは、今でもされているのでしょうか。それとも、もう、そんな時代ではないと言うことなのでしょか」

 採用担当者Aさんは、先ほどと同じように慎重に答えています。

「そうですね、今は求人倍率が高いので、”社員が出身校の恩師や就職関係者を訪ねる”ことは、昔ほど効果はないと言えます。しかし、今年もお出でになったと言われますので、良い印象が学校側に残ったとは思いますので、状況が変われば悪いことはないと言えます」

 採用担当兼任者Bさんが、話します。

「すぐに、今は新規学卒の採用に結びついては来ていないと思います。でも、違う効果があります」

「それは、どのようなことなのでしょか。差しさわりのないところをお願いします」

「出身校の恩師を訪ねるために、電話をしましたところ、同系の他校に移られましたとのことです。お世話になりました恩師なので、移られた学校をお聞きしました。そして、訪ねました」

 恩師が転任されたので、それで終わりとは考えずに、直ぐに転任先を訪ねたと言うことです。新規顧客の開拓と同じで、粘りが必要と言うことです。

「そうしましたら、恩師は転任先では学長になられていて、”よく来たな!”と大歓迎されました。私はそんなに学生の時は目立った方ではなかったと思っていましたので、そう言われて感激しましたよ」

 そこで、Bさんがニコニコと顔を綻ばせて言います。

「それからが驚きましたよ、恩師の学長が就職担当の方を呼ばれたのです。そして、私の方を見ながら、就職担当の方に”どんなことができるのか、相談に乗ってください”と言われたんですよ、本当に驚きましたよ、本当に。こんな展開になるとは・・・」

 通常、”社員が出身校の恩師や就職関係者を訪ねる”ことは、ここまでも行うとは想定していませんでした。Bさんの話を聞いていた中小企業診断士は、楽しさと嬉しさを感じました。Bさんは続けて言いました。

「営業と同じですよ。諦めないで、そして、諦めないで、どこまでも進むとこんな良いことが待っていたんだ、と思いました。本当ですよ」

 この後の詳しいことは書くことができません。が、良い方向に進んでいるようです。支援先は採用担当兼任者が採用活動を行っています。Bさんの本業は新規顧客開拓です。本業で行っていることが、採用活動に活かすと言う効果が出てきていると思います。

 これも昔から採用活動では言われていることですが、”社員が勤務先で楽しく仕事をしていることを、恩師や就職関係者に話す”と、恩師や就職関係者が安心して学生に薦める、と言われています。

Bさんは恩師の学長に勤務先で楽しく仕事をしていることを話したそうです。恩師も大変喜ばれたとのことです。恩師は、自分が推薦した勤務先で教え子が楽しく働いていることを知り、良かった良かったと言われたそうです。働いている社員が、自分自身が楽しく日々仕事をしていれば、恩師や就職関係者、そして後輩にも自信をもって話すことができるからです。

 中小企業診断士も、このようなニコニコ顔の場に立ち会うと、仕事を忘れて楽しいものです。

中小企業診断士 窪田 靖彦