電気料金はどこに向かうのか?

2016年に、電気料金は全ての分野で自由化された。競争を促進し、エネルギー市場を効率化することが狙いだ。約700社が小売電気市場に参入し、市場から電気を安く調達して、新しいサービスを競い合った。

 

2022年に入ると、環境は一変した。ロシアによるウクライナ侵攻を背景にエネルギー価格は上昇、電力不足を懸念して取引価格は大きく高騰した。多くの電力会社は赤字に陥り、約2割は事業継続を断念した。逆ざやを防ぐため、営業活動を停止した。契約先が見つからない大口顧客は「ラストリゾート」と呼ばれる最終保障供給契約に逃げ込んだ。家庭用では規制料金が最も安くなり、自由競争は歪んだ。

 

2023年6月、大手電力会社の規制料金値上げ申請が認可された。業績が悪化していた新電力は値上げ幅が少ないと嘆いた。

 

電気は社会に不可欠なサービスである。我々の生活を守るために、適正な料金水準を維持すべきだ、と考える人は多い。しかし、我々は、電力の自由化を選択し、電気料金を市場に委ねた。燃料価格や電力取引市場の変動、太陽光発電が我々の日々の電気料金を決めている。

 

ここにきて、電気料金安定に向けて、新たな取り組みも見られる。政府は電力取引市場に発電設備への投資を促進させる仕組みを導入。発電会社はLNGの長期契約を復活させている。小売電気事業者は先物取引を組み合わせたメニューの提供を始めた。

 

社会に欠かせない電気料金を自由な市場に委ねる不安はあるものの、まだ、完全自由化から7年しか経過していない。

 

今後、ルールの整備と新たなテクノロジーやサービスを取り込みながら、市場は社会にとって、ちょうど良いバランスを見つけると、期待している。

 

 

(河原 豊)