モノづくりに憧れて製造業に入社し、晴れて大物機械製品の製造工場の生産技術担当に配属されました。配属早々に作業長から呼び出しがあり作業現場へ向かったところ、使い込まれた、しかしながら美しい形の金づちが目に入りました。思わず手に取り見惚れていると、作業場で作業していた組立職人から「バカヤロー。俺の相棒に触るんじゃねー」と怒鳴られてしまいました。その金づちは、市販のものを自分の手に合うようにグリップを削り、かしめ(金属を叩いて2つの部品を密着させる加工方法)作業時の打撃の衝撃を吸収させるために、首元を細してしなるように削られていました。最高の製品に仕上げるために、組立職人達は自分専用の様々な道具を揃ていました。
後日、私に怒鳴ってきたベテランの組立職人が部品を組立ならが私にこう語りかけてくれました。
「あいつら(機械職人)が丹精を込めて作ったこの部品を受け取って、俺たち(組立職人)が最高の状態で組み立てて最後の魂を吹き込むんだ。」
その言葉にはモノづくりに対する誇りと自信に満ち溢れていました。
あれから27年、性能の高い加工機が開発され、生産管理のIT化が進み、モノづくりのあり方は進化し続けてきました。しかしながら、いつまでの変わらないものがあります。それは、モノづくりに妥協を許さない職人達の魂です。
昨今製造業で働く人の数が減少しており、町工場では1998年をピークに約6割も減少しています。国内の労働人口は減少していますが、中でも製造業が全産業に占める割合は2002年の19%から2023年度の15.6%まで減少しています。
なぜ若者にとって「モノづくり」の魅力が薄れているのでしょうか。
我々昭和世代が夢中になったプラモデルの出荷量は2007年から増加傾向にあるように、世代・性別問わず「モノづくり」に魅力を感じる人はもっともっと多いはずです。
だれでも快適に働けるよう職場環境を整備し、技術のデジタル化、スマートファクトリー化を進め、しかしながら魂を込めてモノを作ることはしっかりと伝承する。確かなモノづくりの強みを世界に発信し、グローバル化を加速する。この町工場という日本の宝を元気づけ、そして未来につなげるために、我々おおた診断士会ができることはたくさんあります。
「これ、自分が作ったんだ」と誇らしく語る未来の職人を1人でも多く輩出できるよう全力でサポートして参ります。是非お問い合わせフォームからご連絡ください。
(米田 哲)