人は手に入れたものは手放さない

例えばの話です。

ある日、あなたはある人から1万円をもらいました。思いがけず、1万円はあなたのものです。すると、その人がこのような提案をしてきました。

「私とじゃんけんしませんか?あなたが勝ったならば、もう1万円を渡します。ただし、あなたが負けたならば、さきほど渡した1万円を返してください。」

さて、あなたはどうします?

おそらく、多くの人がじゃんけん勝負はしない、を選択すると思います。しかし不思議ですね。負けて1万円を返しても、あなたは元通りで損はしていないはずなのに。

 

このような心理は、行動経済学で「損失回避」と呼ばれています。人は同じ価値でも、得ることより失うことの方が、心理的ダメージが大きいそうです。この心理をついた販促方法に思いあたった方も多いでしょう。クーポン券がそうです。普段ならば買わないようなものでも、クーポン券があったために、つい買ってしまった経験がある方は多いのではないでしょうか。また、限定品もそうです。「今だけ」とか「ここだけ」とか言われると、つい買ってしまいます。損失回避は目に見えるものだけでなく、目に見えないもの(例えばせっかく手に入れた機会など)でも失うことを避けたいと思うのですね。人は手に入れたものは手放したくないのです。

 

その他にも、人間の心理を応用した販促方法はいくつもあります。「行動経済学」や「ナッジ」というキーワードで調べてみてください。

 

ただし、人の心理や行動は合理的ではありません。販促施策を打つ場合には、効果をしっかりと測定しながら修正していく方が効果的です。

 

 

(妹川 聡)