作成に時間が掛かる会議記録

 

 Ⅿ社の月1回の幹部会議は、K社長と各部署の責任者が出ています。K社長は責任者から発言が出るようにとじっと我慢していたので、このところ話しが出るようになってきました。そして少しづつですが、発言のほとんどが報告であったものが、やがて報告を離れて少しづつ「自分の部署は計画に沿って”こうしたい”」と言う意見が出るようになりました。

 そこで、中小企業診断士は会議の記録には報告事項は要点だけ載せて、決定事項、継続検討事項を書き込むことを提案してから会議記録が作られるようになりました。とは言っても、報告だけで済ませてしまう責任者が多いことは続いています。しかし、新しい年度になって、新たな責任者が増えたので、中小企業診断士としてはこの雰囲気を代えたいと思い話しました。

継続検討事項が出てきました

「アノー、先ほどのAさんのお話しは、とても大切なことだと私も思いますが、もう少し詳しくお話しして頂けないでしょうか、ちょっと聞き取れない部分もありましたので、申し訳ありません」

 司会者も、Aさんの方を見ながら、言いました。

「確かに重要な部分がありますので、Aさんもう一度詳しく話してもらいませんか」

 このような要請とでも言うのか、発言は初めてだったのでAさんは、エッツと言う顔つきでしたが、話し始めました。実際の話しの内容をここで書くのは避けますが、分かり易くしてみます。

「エーと、お客様と思っている層は○○○と仮定して、ネットなどで”○○○層がどのような点に現状困っているのか”を検索を始めたところです。今のところ、××と△△が困っている点として出てきていますので、この2点を満たすにはどうしたら良いのかを考えています」

 すると、Bさんが手を挙げ、司会者の許しを得てから話し始めました。

「でも、Aさんはもうすでにこの仕事は少なくとも5年はやってきたので、今までのお客様の意見はどうなっているか、お分かりなのかなと思いますが、この点はどうなのでしょうか。今までのお客様から引き続いて受注することも必要なことなのかな、と思いますので・・・」

 Aさんは、今までのように報告が終わればそれでよいと思っており、このような展開になるとは思ってもいなかったようで、司会者の方に顔を向けて「困りましたよ」と言う表情ですが、司会者はそんなことはお構いなしに言いました。

「Aさん、Bさんが言われたように”今までのお客様の意見をまとめる”ことは大切で、その要点を明らかにすることは大切と、私もそう思いますがこの点はどうなのでしょうか」

 Aさんは答えようとはしていますが、急なことなので答えがまとまりません。時間が過ぎてゆくだけなの経過を見て、中小企業診断士は発言しました。

「Bさんが言われるのは、今までのお客様が満足されているのかなど現在の状況を捉えるのが始まりじゃないのか、と言うことですよ。現在の状況が今はまとまっていないならば、次までにされたらと思いますよ、どうでしょうか」

 Aさんは、この助け舟に乗って来られて、すこしホットした様子で話しました。

「たしかに、Bさんが言われたことは大切なことなので、纏めたいと思います」

 このようなことでAさんの外にもその後の議論でCさんとDさんにも宿題が出ました。

 

何故か会議記録の作成に時間が掛かる

 このような経過があって新しい展開が始まってきましたが、このごろチョッと気になることが出てきました。それは、記録の作成に時間が掛かることです。会議が終わった後、記録がメーリング・リストで出席者に回覧されてくるのが2週間ぐらい後です。これではおおよそ半月が経った後になってしまい、決定事項や継続検討事項を残る半月で行ったり、検討したりすることになりかねません。それに加えて、中小企業診断士が手元でメモしたものと記録の決定事項や継続検討事項の内容が異なることが時おりありました。そこで、中小企業診断士はK社長に話しました。

「どうなのでしょうか。会議で決まったと思うことが、後から変わってしまうのは、会議の意味が薄れていまうように思いますが・・・」

「記録の作成に時間が掛かる裏側には、実際、いろいろなやり取りがありました。良いことではないので、なんとかしたかったと思っていました」

「どうなのでしょか、会議が終わったら記録係の方が記録をモニターに映し出したら、と思います。そして、皆さんが決定事項や継続検討事項の内容を確認したら良いのではないか、と思いますよ。これであれば、会議の終わった後のやり取りはなくなりますよ」

「それは、良い方法ですね、記録の係も今まで会議が終わった後、字句の調整に時間が掛かってしまい、私に相談に来ていたこともあって困っていたこともありますから。これで、記録仕事の手離れが良くなると思いますし、決定事項や継続検討事項の手掛けるのが早くなる効果も出てきます」

早くできることは早くする

 K社長が次の会議で、会議が終わったら記録をその場で確認するよう話しました。

 すると、Eさんが話しました。

「今のお話しはどういった良い点があるのでしょうか」

「それは、会議が終わった直後であれば、皆が決定事項や継続検討事項の内容は鮮明に覚えていて、正確な記録を残せることできることと、記録がすぐにできあがるので決定事項や継続検討事項を手掛けるのがはやくなることです」

「そうですね、今までは会議終了後にいろいろと意見が出てしまって、記録がまとまるのに時間が掛かってしまっていたのですから、良いことだと思います」

 記録係の方も話し出しました。

「そうなのです、会議が終わって記録案を社内のメーリング・リストに出すと、いろいろと意見が出てしまって、まとまるのに時間が掛かってしまっていました。記録が早く決まることに賛成です」

 すると、Fさんが言い出しました。

「でも、会議が終わって記録案を見ると、早とちりのこともあったり、順序が違っていたりして、修正ができる点は良かったと思いますが、この点はどうなんでしょうか」

「それは、会議の時に考えれば良いし、あるいは、その時にそう話したらよいのではないかな」

 他にも意見がでてやり取りがありましたが、会議終了後に記録案を検討し、確定することになりました。会議後に記録内容を確かめるのは、10分程度が掛かります。しかし、今までは2週間もかかっていたことから見ると、早くなりました。これによって、早くできることは早くすることが社内で広がることを期待しています。「やらなくてもよいことはやらない」、と言うことです。会議記録を会議が終わった直後に作ってしまえば、会議後の記録作成はもうしなくてもよくなります。「やらなくてもよいことはやらない」、そして、「やれることはすぐやる」、これらがM社の中で始まるよう期待しています。

 新しい年、一歩でもよくしたいと思っています。

中小企業診断士 窪田 靖彦