いつ月次決算ができますか?

遅い月次決算は意味がない

「経営計画の立て方」説明会でのことです。休憩時間に何人かの経営者と雑談し「ところで、月次決算はしていますか」と尋ねたところ、全員が実施していました。「経営計画の立て方」の勉強会の出席者ですから、当然のことです。

しかし、「月次決算は、いつできますか」と問うと、「締め後、18日後」「いや、15日後」などとの答えです。「18日後、15日後に月次決算が完成して、意味があるのか」と疑問を感じてしまいました。  

週休2日企業では、土日が入るので18日後は月末近い日になります。15日後は、最終の週が残るだけとなります。そのような日に月次決算ができ、計画と実績を比べも対策を実行できる日数の余裕がなく、これでは月次決算をしているアリバイづくりで、経営に役立つことは限りがあります。

 なぜ月次決算が遅いのか

再開後の初めに断って、申し上げました。「経営者は、事実をつかんで、その上で経営することが大事です。PDCAと言って計画・実行・検証・対策の環をまわしても結果の把握が月末近くでは、対策を立てても実行できません。早めるようにして下さい」と。司会者の「何か、質問は?」との問いかけに、参加者から「仕入業者からの請求書が遅く、これをはやめるにはどうしたらいいのか?」との質問が出て、そのとおりと頷く方もいます。

 「貴社が、お客様に納品した場合、お客さまが検収した後、検収結果に沿って貴社は請求書を出していますね」

 「そです」

 「そのことは、お客さまが貴社の請求額を決めていることですね」

 「そうですが・・・」

 「それでは、なぜ、貴社では納入業者が貴社の支払額を決めているのですか」

 「ウーン」

 会場は、静かに聞き耳をたてています。

 基本は貴社が仕入額を決める 

社では商品や部品などを仕入れる場合、発注書を出しますか?」

「出します」

「商品や部品などが貴社に納入された時、発注内訳と納品内訳を照合していますか?」

「ハイ」

「基本は、貴社が納品内容と額を納品の度に確認して、仕入額を決めていることです!」

「そうか」

「これらをまとめれば、月の支払額は決まります」

その時に確かめて、後に残さない

発注するときには、当然、発注内容を正確にします。発注側と受注側の間で品目、数量、単価そして金額等に誤差があれば、自社が発注内訳と納品の際に確認した事実をもって誤差を調べることができます。発注した側が、支払額を決めるのは当たり前のことです。資材や部材倉庫、製品倉庫は、お金が溜まっているところです。現金の出し入れと同じように、これら倉庫の物品の出し入れを都度確かめる月次決算は早くなります。

 正確にするとは、伝票と現物を照らし合わせて、出し入れの度に品目と数量を確認することです。急ぎだからといって出荷伝票なしで製品を出荷してしまうことなどは、やってはいけません。納品の度に必ず伝票をつけて、受領したことを示す印鑑を押してもらった納品受領書を保管しておくことが基本です。受領印がなければ「なぜなのか」をその度に確かめて処理することが基本です。その時であれば、事実も確かめやすく、伝票も探しやすく、片付くのがはやくなります。

ここで重要なことは、その場その場で正しく行い、後から行うことを無くすことです。後から確かめたり直したりすることは、ムダです。その場で正確に仕事をすると、ムダがなくなります。月次決算の早期化すると、その都度正確に処理し、ムダがなくなります。

どのような優れた会計ソフトを入れても、ソフトに入力する中身が不正確であれば、そして入力することが遅ければ、会計ソフトは宝の持ち腐れです。会計ソフトを活かすには、「物の出し入れはその都度正確であることを確かめること」「物の出し入れは伝票とその度に確かめて処理すること」です。忙しいからといって、後から確かめることはやめたらよいです。

倉庫は、金庫と同じです

 資材や部材倉庫、製品倉庫の担当者を決め、倉庫に担当者以外の者が勝手に出入りすることは、禁じます。許可ない倉庫担当者以外も者が倉庫に出入りすることをできなくします。

 現金が保管されている金庫を、現金出納担当者だけが触ることができるのと同じです。倉庫には多くの物品が保管されており、小口現金より多額になります。倉庫担当者だけが倉庫に出入りできるようにすると、正確に仕事をしなけばならない責任感がでてきます。月次決算を早めるとこのように担当者の仕事の範囲が決まってくるので、責任が明確になります。

 会計ソフトを有効に使うには、担当者毎に担当する範囲を決めて、責任をハッキリさせることです。これにより曖昧さがなくなり、月次決算の早期化ができます。

 最初が一番大事です

受注生産の会社では、売上を確定する上で、最初の段階で受注する内容、特にその仕様をキチンとお客さまと確かめることは大事です。量産品販売会社の売上は個数×単価ですから、次のような問題は生じません。仕様をキチンと確認すると、後から手戻りや手直しがなくなり、売上高が正確にそして早く計算できるようになります。仕様確認とともに、検収の仕方と中身も同意した内容で決めておくと、円滑に売上が確定します。これは受注生産会社の仕事の進め方の基本で、これができてくると月次決算は早くなります。

月次決算を早めるには、会計ソフトを回す前に決めことをしっかりと行うことです。仕様や数量、検収の中身がシッカリしていない売上は、後からいろいろとお客様との間でもめごとが出て、その解決に忙しくなって、月次決算は早くはできません。このような解決に走り回ることは、ムダ働きです。

筋肉質の締まった会社にしよう

このように月次決算を早めることは、経営の身近なところにある基礎を固める

ことになります。さらに、会社の規模と事情に応じて事業分野別、製品別、工程別など毎に月次決算を出すことで、それぞれの責任者が自身の結果を掌握して自ら対策を考え、実行することにつながります。会計ソフトを入れただけでは、月次決算は早まりません。会計ソフトを活用するには、経営者が自身の会社の実態を見て、改善すべき点を上げて、直すことが大切です。そして、筋肉質の締まった会社になります。

ITコーディネーター 窪田靖彦